2.副反応に関する当局説明と報道

l  副反応についてほとんど書いていないQ&A【資料3】はもとより、「重大な安全性の懸念は認められず、グレード3の有害事象で頻度が2%を超えるものは、疲労3.8%と頭痛2.0%のみであった」【資料4】という表現は明らかに説明不足であり、多くの国民にとってミスリーディングです。厚生労働省は、後述するアリバイ作りを含めて、数多くの言い訳を用意していると思われますが、CDCが指摘した結果が日本において出現した場合、それらの言い訳は、火に油を注ぐだけの結果に終わり、多くの国民が「日常生活に支障が生じる可能性が3%もあるなんて知らなかった」と怒り出すことでしょう。

Ø  新型コロナワクチンを接種すると、3%の人は日常生活に支障が生じる可能性があります」という説明が報道で流れたことはありませんし、厚生労働省や担当大臣も、国民に対して分かりやすく説明していません。新型コロナワクチンが承認されて接種が始まっている現時点においても、国民に対して、上記の事実を公言していないのは大問題です。

l  厚生労働省は、ファイザー製の新型コロナワクチンを承認した際のプレスリリース【資料10】でも何ら説明していません。ただし、当該リリースの添付文書【資料11】において、極めてわかりにくい書き方ではありますが、副反応に関する事実を開示し、「説明した」というアリバイを作っています。

Ø  当該添付文書【資料11】は、下記の治験結果を開示しています。

   日本での治験(2回接種後) 米国での治験(2回接種後)
疲 労 60.3%(Grade 33.4%)  55.5%(Grade 33.8%)
頭 痛 44.0%(Grade 31.7%)  46.1%(Grade 32.0%)
悪 寒 45.7%(Grade 31.7%)  29.6%(Grade 31.6%)
疼 痛 79.3%(Grade 31.7%)  72.6%(Grade 30.9%)
発 熱 32.8%(Grade 30.9%)  13.6%(Grade 30.9%)
関節痛 25.0%(Grade 30.9%)  20.5%(Grade 30.7%)
筋肉痛 16.4%(Grade 30.0%)  33.5%(Grade 31.7%)

(注1)「Grade 3」は、重症度が「高度(日常活動を妨げる)」以上として報告された事象を指す。

(注2)発熱(38度以上)については、38.9℃を超えた場合に、重症度が高度(Grade 3)以上とした。

(注3)1%未満ではあるが、顔面麻痺や四肢痛、背部痛が報告された。

l  厚生労働省がわかりにくく開示している内容を、国民が理解できるようにわかりやすく言い換えるならば、「過半数近い接種者において、疲労・頭痛・悪寒や接種部の痛みが発生し、3~5人に1人は発熱・関節痛・筋肉痛という症状が出る。日常生活に支障が生じる程度に悪化する可能性は、疲労で3%を超え、頭痛や悪寒は2%程度。接種部の痛みや発熱、関節痛、筋肉痛は1%前後になる。また、稀ではあるが、顔面麻痺や四肢痛、背部痛の可能性もある」ということになります。しかし、田村憲久厚生労働大臣は、認可直後の記者会見(2021.2.16【資料12】)において、「本当にごくごくまれな状況で起こりますから、そういう情報もしっかりとお伝えさせていただいて、やはり副反応の情報をちゃんとお知らせするというのが大事」と言いながらも、肝心な数値などについては丁寧に説明していません。

Ø  記者会見【資料12】において、田村厚生労働大臣は、新型コロナウイルスの「副反応」のことを尋ねられて、下記のように応えています。

(記者)ワクチンの話ですが、副反応が発生した場合に、どう国民に伝えて理解を促していくかという点と、今後幅広く国民に接種を呼びかけるための考え方というものを改めてお示しお願いします。

(大臣)副反応は、まれではありますが、予防接種でそれは起こります。他の予防接種でもいろいろな副反応があります。ですからそこは国民の皆様方にちゃんとお伝えをしなければならないと思います。基本的に腫れでありますとか痛みですね、それから倦怠感、こういう副反応は一定の確率で出ているわけで、ただ、数日でこういうものはなくなるというのがほとんどです。ですから軽度・中等度といいますか、副反応というのは一定程度であると。一方で、アナフィラキシーショックのような、これも対処をちゃんとやれば心配ないわけでありますが、放っておくと大変な状況になるようなこういう副反応も、日本の治験ではありませんが、海外では見られているわけでございます。本当にごくごくまれな状況で起こりますから、そういう情報もしっかりとお伝えさせていただいて、やはり副反応の情報をちゃんとお知らせするというのが大事なわけで、そこをお知らせせずに、副反応がないかのような認識になりますと、軽度の副反応でも国民の皆様方はそれに対して不安感を持たれるわけでありますので、その情報をしっかり出していくということが、私は国民の皆様方にご理解をいただく一番重要なところではないかと思っております。

l  ちなみに、「副反応」については、国立感染症研究所が「新型コロナワクチンについて」(2021.2.12【資料13】)という解説書を公表しています。分かりにくい表記ではあるものの、厚生労働省よりは良心的な説明を試みています。また、厚生労働省もアリバイ作りを意識して「安全性について(臨床試験の概要)」【資料14】や「審議結果報告書」【資料15】を最近開示しました。

Ø  国立感染症研究所は、ファイザー製の新型コロナワクチンの「副反応」に関する説明部分で、下記のように記しています【資料13】。

u  接種部位の症状のうち報告が多かったのは痛み(6683%)であり、日常生活に支障が出る重症例は1%未満。

u  接種部位の症状の報告頻度は、1回目接種後と2回目接種後で同等であり、全身症状の報告頻度は1回目接種後より2回目接種後で多かった

u  全身症状のうち報告が多かったのは疲労感(3459%)と頭痛(2552%)で、日常生活に支障が出る重症例は疲労感が3.8%、頭痛が2%、その他の症状が2%未満

u  2回目接種後の発熱は若年群で16%、高齢群で11%

l  この間、ワクチン担当の河野太郎大臣は、「副反応」について動画(2021.2.2【資料16】)を公表し、わずかに踏み込んだ発言をしていますが、「副反応の情報をちゃんとお知らせする」(田村厚生労働大臣)というレベルには到底至っていない内容にとどまっています。また、承認後に開催された「新型コロナワクチンの接種に関する記者会見」(2021.2.16【資料17】)においても、「副反応」については何ら解説していないのが実情です。

Ø  河野大臣は、「ワクチンを打ったあと、打った場所の腫れ・痛み、発熱、頭痛などの副反応が起こることがあります。治療を必要としたり、障害が残るほどの重いものは、極めて稀ですが、ワクチンによる何らかの副反応が起こる可能性はゼロではありません。現在承認申請されている新型コロナウイルスのワクチンについても、打った場所の痛みが6683%の方にあったことが報告されています。また、38度以上の発熱が、2回目の接種後1116%の方に発生したと報告されています」と動画で語っています。ただし、ワクチン承認後の記者会見【資料17】では、「ワクチンの副反応に関する政策については、田村厚生労働大臣が担当することになると思います」として自ら回答することを避けました。

l  ちなみに、厚生労働省の「インフルエンザワクチンの副反応疑い報告状況について(2018.10.12019.4.30)」(2020.7.17【資料18】)によれば、国民に馴染みのあるインフルエンザのワクチンにおける副反応(軽度を含む)の発生率は0.0004%(25万人に1人)にすぎません。したがって、新型コロナワクチンを接種した場合(接種部位の痛み6683%、疲労感3459%、頭痛2552%【資料13】)の2~3人に1人というのは極めて高い水準です。

Ø  また、インフルエンザワクチンの接種による重篤者は、0.00015%(70万人に1人【資料18】)にすぎません。したがって、新型コロナワクチンを接種した場合(疲労感3.8%、頭痛2%、その他の全身症状2%未満、接種部位の痛み1%未満【資料13】)の23%(3050人に1人)というのは極めて高い水準です。

l  ところが、マスコミは、「接種部位の痛みなどがあり得るが、重篤な副反応はほとんどない」(時事通信:2021.2.12【資料19】)、「副反応の疑いがある重篤な有害事象は特段、見られなかった」(NHK2021.2.13【資料20】)、「副反応については痛みや頭痛、関節痛などがあったが海外と差はなく、重篤なものはなかった」(朝日新聞:2021.2.14【資料21】)、「接種部位の痛みや倦怠感、頭痛などが一定程度の頻度で報告されたが、重篤な副反応は確認されなかった」(毎日新聞:2021.2.14【資料22】)などと報じるだけで、事実を客観的に伝えるのではなく、「安心感」を醸成する方針で報じています。この結果、ほとんどの国民は、これまで述べてきた「副反応」に関する事実を知らないと思われますから、報道内容と客観的な事実の間に乖離が出てきたときは、かなりの混乱が生じる恐れがあります。

Ø  2021219日から接種が始まった富山県の富山労災病院で、初めて「副反応の疑いがあるジンマシンの発生があった」として、220日に報道がありました(NHK2021.2.20【資料23】)。この副反応については、当事例が「軽症」に過ぎないにもかかわらず、同じ土俵で比較できないアナフィラキシーのような「重篤な場合」の確率を持ち出し、専門家に「過度に心配する必要ない」と言わせていたのが象徴的です。

【資料10】厚生労働省(2021.2.14
・医薬品医療機器等法に基づく新型コロナウイルスワクチンの特例承認について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16734.html

【資料11】厚生労働省(2021.2.14
・コミナティ筋注
https://www.mhlw.go.jp/content/11123000/000738743.pdf

【資料12】厚生労働省(2021.2.16
・田村大臣会見概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00321.html

【資料13】国立感染症研究所(2021.2.16
・新型コロナワクチンについて
https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/corona_vaccine.pdf

【資料14】厚生労働省(2021.2.22
・ファイザー社の新型コロナワクチンについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html#002

【資料15】独立行政法人医薬品医療機器総合機構(2021.2.22
・審議結果報告書
https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210212001/672212000_30300AMX00231_A100_2.pdf

【資料16】官邸(2021.2.2
・ワクチンの副反応
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

【資料17】官邸(2021.2.16
・新型コロナワクチンの接種に関する記者会見
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine_arch.html

【資料18】厚生労働省:第42回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和元年度第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(2020.7.17
・インフルエンザワクチンの副反応疑い報告状況について
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000650117.pdf

【資料19】時事通信(2021.2.12
・コロナワクチン承認決定 ファイザー製、17日にも接種―厚労省部会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021021200749&g=soc

【資料20NHK2021.2.13
・ファイザー製ワクチンの承認を了承 国内初 厚労省専門家部会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210212/k10012863501000.html

【資料21】朝日新聞(2021.2.14
・ファイザーワクチンを承認 17日にも医療従事者に接種
https://www.asahi.com/articles/ASP2G5JMFP2GULBJ00F.html

【資料22】毎日新聞(2021.2.14
・新型コロナワクチン、国内初の正式承認 米ファイザー製
https://mainichi.jp/articles/20210214/k00/00m/040/196000c

【資料23NHK2021.2.20
・コロナワクチン 国内初の副反応の疑い 富山県でじんましん発生
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210220/k10012878071000.html